紫外線とオゾン層
 意外と知られていない恐怖と不安

皆さんのHPを拝見しますと ”オーニングの効果” という項目で,紫外線によるオゾンホールの拡大をクローズアップされております。でも、その紫外線の恐ろしさについて詳しく書かれたものがあまりないので、特集を組んでみました。

 1)紫外線・・・ いえいえ 実際には死骸線です

太陽からの光は、大きく分けて2つに分類されます。1つは、私たちが見ることのできる可視光線と呼ばれる範囲のもの、そしてもう一つは、それ以外の人間には見ることのできない範囲の光線です。波長の長さから言えば3つに分かれます。すなわち長い波長の順に 赤外線(Ultra Red Rays)、可視光線、短い波長の紫外線(UltraViolet Rays)と続きます。特に紫外線は生物にとって非常に有害で、生物に何らかの影響を与える強いエネルギーをもち、その強さは波長の長さに関係し、エネルギーの弱いほうからA波、B波、C波と区別されます。(波長が短いほど有害)特にB波とC波は、生物にとって非常に有害で何がしかの影響を与えます。

夏に山とか海に行くと紫外線が強いため日焼けをします(一種のヤケドの状態)。ところが、モット紫外線が強くなると生物を形づくっている細胞や遺伝子を破壊してしまいます。ですから、紫外線があまりにも強いと、地球上では生物は生きていられないのです。
以前、ワイルドワンズの歌で「小麦色したかわいい子〜」という歌詞があり、女性は日焼けに時間をついやした時期もありました。(さしずめ、現代のガングロの元祖)。また、「健康のために日光浴をしたほうが良い」といわれた時代もありました。ところが今では、それらのことは恐怖の的になっております。なにしろ、1998年から母子手帳に書かれていた「日光浴のススメ」という文字が削除されたのです。それはとりもなおさず紫外線の害のほうがはるかに大きいと認識されたからでしょう。
  2) 紫外線とオゾン層の関係

紫外線とオゾン層には密接な関係があります。それは、原始地球すなわち地球誕生(46億年)時にさかのぼります。原始地球の大気は窒素(N)と二酸化炭素(CO2)だけしかなく、まだ酸素(O2)は有りませんし、ましてやオゾン(O3)はありません。地球には太陽からの紫外線A・B・C波がふりそそいでいたため、最初にできた原始生物は海の中にしか生きられなかったと考えられています。なぜならば、運のいいことに地球には海があり、紫外線は水に吸収されやすいので、海の中では紫外線の脅威が少ないため、地球上の生物は海の中でしか生きられなかったと考えられております。海中で光合成を行う植物のおかげで酸素が増え始め、大気中に酸素がたまり始めたのが5億年前といわれています。そのような状況から安定した酸素(O原子が2ヶの状態)が紫外線等により分裂し、バラバラになった酸素原子が他の酸素と結合しオゾン(O原子が3ヶの状態)が形成されていったと考えられています。すなわち、O3のオゾンは非常に不安定な状態なので、フロンやハロン等の塩素や臭素を含む物質が入り込むと、紫外線を受けて分解し、それが引き金になって分裂が行われ酸素(O2)の状態になる・・・このように、紫外線による酸素の分解ーオゾンの発生ー紫外線によるフロン等の分解(塩素の発生によりオゾンが分解される)を繰り返しながら少しずつオゾンの量が多くなり、現在のオゾン層ができたと考えられています。このようなオゾン層が形成されると生物にとって有害な紫外線(B波,C波)がオゾン層に吸収されて地球に届かなくなり、ようやく生物は海から陸に進出することが出来たのです。


 3)オゾン層の厚みって、どのくらいあるの?
オゾン は、地上から10〜50kmの成層圏にあって浮遊している状態で層をなしていると考えれば良いでしょう。ただ、その状態を地上付近までおろす事ができるとすれば一気圧の力で圧縮されその厚みは2〜3mmにしかなりません。すなわち、たった2〜3mmのオゾンを形成する層で生命は紫外線からの脅威から守られているのです。オゾンの量は m atm-cm( ミリ アトム センチメートル)という単位で表し、220m atm-cmより少ない部分をオゾンホールと呼びます。現在では南極上空のオゾンホールは日本の面積の70倍くらいになりました。また、北極のオゾンホールも発達し私たちが住んでいる北半球でもオゾンの量が少なくなっています。ちなみに、塩素1ヶで10万のオゾンを破壊する威力があるといわれています。

私が小学生のころ(1960年代のはじめ)、少年マガジンか少年サンデーに地底世界の入り口と称し、宇宙衛星から映した南極のオゾンホールの写真を掲載しておりました。このときにはまだ、オゾンホールという概念がなかったんでしょうね。オゾンホールとは1980年代になって、急に騒がれた言葉だからです。当時は真剣に地底世界に興味を持っていたことを覚えております。
南極でホールの大きさが最大になったときの写真北半球におけるオゾンホールの拡大がはっきりと分かります

)オゾン層破壊による環境への影響

紫外線の弊害

1)ヒトへの影響
 紫外線B波やC波の影響により、ヒトの身体は細胞に傷をつけられ、目の病気(白内障)や皮膚の病気(皮膚ガン)を引き起こすほか、免疫力を低下させます。特に小さい子供ほど細胞分裂が活発なため、遺伝子に間違いが起こりやすく危険なのです。日光浴が健康のシンボルだったのは昔の話です。現在では皮膚がんの患者は年々増加して、その原因に子供のころの日焼けが影響していると考えられております。
 
1)白内障の原因になります。長期に紫外線を浴びれば、水晶体が白くにごり白内障にかかってしまいます。レンズはたんぱく質を主成分として構成されていますが、血管がないため新陳代謝が起こりません。長い年月をかけてレンズに紫外線があたるとたんぱく質の変性がとみ、弾力性や透明度が低下し、白内障が引き起こされます。
2)皮膚がんの原因になります。地球上の低緯度に住む人に皮膚がんが多いことから、紫外線が皮膚がんー特に表皮の最下層にできる基底細胞ガンの主要な要因であることが確かめられました。日本人の場合、皮膚のメラニン色素が紫外線をある程度カットしてくれますが、メラニン色素のない白人には脅威の的になっています。
3)雪目や溶接のしすぎの時激しい痛みが伴います登山やスキーにいって長い時間強い紫外線を浴びたとき雪目になったり、また、アーク溶接のさいに防護面をつけないで作業をしたときに目が痛くなります。これは紫外線により角膜の上皮細胞が壊死をおこすことによります。普通は一日くらいで細胞が再生して直りますが、その間は目も開けられないくらい激痛を伴います。
2)ヒト以外の動植物への影響     

UV-Aは窓ガラスを透過するため、ウインドーの中のものが色あせすることがあります。また、プラスチツクの劣化を促進します。

地球の動植物への影響をはぐくんでいる要素物質としてプランクトンがありますが、そのような小動物の成長が妨げられ,そのために漁獲高が減少したり農作物が被害を受けたりして私たちの食料供給にも大きな影響を与えます。
3)気候への影響成層圏の大気の環境が変化し、局地的に大風になったり台風やハリケーンが大型化したり、逆に干ばつになる地域も出て農作物の収穫に多大な影響を与えます。また、紫外線が地上にふりそそぎ、地上付近の酸素が反応し、対流圏オゾンが増えて光化学スモッグの原因にもなります。このように地球規模で大きな影響を受けることになります。

コマーシャル スポット (写真をクリックして こーひーたいむ  オカタイ話ばっかだとつかれるもんネ。)
幼稚園や保育園では、紫外線から子供を守る対策としてオーニングが使われております。


紫外線の効用
1)光線療法紫外線の免疫をおさえる作用を利用して、薬で効果があらわれない難治性の皮膚炎を治療します。
2)殺菌効果台所で使うマナイタやフキン、およびお布団を日光に当てると紫外線により殺菌されます。また、サウナに入ったとき櫛を紫外線の殺菌ボックスに入れるのを見たことがあるでしょう。これなどは細菌のDNAを破壊する作用を利用したものです。最近では浄水器に紫外線で殺菌するタイプもあるそうです。
3)昆虫の可視光線?動物の本能には、子孫繁栄という大事なものがあります。昆虫でいえば、我々の目にはオスやメスを見分けつかないことが多いのですが、彼らにとってはいとも簡単に見分けがつくというのです。昆虫には紫外線が見える種類が多くあります。例えばモンシロチョウ。メスの羽は紫外線をよく反射しますが、オスは紫外線を吸収します。ですからモンシロチョウの目にはメスは明るく光って見えるといわれています。やぶ蚊も同様にメスが明るく見えるそうです。人間の可視光線の範囲とちょっと違うということです。
4)野菜の抗酸化物質の作成野菜は紫外線を浴びれば浴びるほど自分の身を守るために抗酸化物質をたくさん作るそうです。ナスや黒豆等の「アントシアニン」は視神経の働きを活発にします。ブロッコリーの「フラボノール」は免疫機能のアップ。大豆や豆腐、納豆の「イソフラボン」は皮膚がんの予防に役立っています。
5)ビタミンDの合成を促進紫外線にはビタミンDを合成する働きがあり、カルシュウムの吸収を促進し骨が丈夫になるという効果もあります。ただ、夏場の日光の下では3分くらいで十分効果があり、あまり長く日光浴をすればかえって弊害のほうが多くなります。

このようにしてみると、紫外線には攻撃的な殺菌効果という面では恩恵を受けておりますが、最近の異常気象や動植物の生態系の異常等により、食糧事情に深刻な事態を引き起こす「ヒキガネ」ともいえ、地球全体の問題として議論しなければならない問題だと思います。
これからの紫外線対策
 ・子供が外で遊ぶときはなるべく日陰で、かつ防止を着用のこと。できれば、後頭部にツバが長くついたもの(約7cm)が望ましい。
・首筋も日焼けしやすいので、襟のある服を着たほうが望ましい。(甲状腺の保護を目的とするため)
・服や帽子の色は黒が一番。日傘も黒にしたほうが良い。
・ハダの露出は最小限にする。(曇りの日でも、50〜80%の紫外線がふりそそいでいるため)
・日光浴は短く。
・まぶしい日差しの下ではサングラスをつける。
・サングラスをつけるときはUVカットの効果がある淡い色のほうが良い。(UV効果のない黒いサングラスだと、ものを見るとき瞳孔が開き紫外線がめに入りやすいため)

以上、考えられる事は書いておきました。大切なわが子のためにも、紫外線に対する備えは十二分にされたほうが良いという事です。