テント屋としての反省とこれからのオーニング屋

お猿さんじゃないけど「反省!」

1)オーニングの形への無関心
オーニング(日除けテント)というと、以前は日差しをよけるためのものであり、雨よけであり、お店の看板でもありました。そこにあと一つ付け加えると「ボ・ロ・カ・ク・シ」。そのようなオールマイティなものになるとおのずと形が決まってきます。すなわち、箱型のオーニングです。一般の商店ならこのタイプのもので良いのでしょうが、いまやそのような商店も、スーパーの大型化やコンビニの台頭で少なくなってきております。今から数十年前、私達は職人としての意地と誇り(技術)をかけて、いろいろな形のオーニングに挑戦してきました。それが今では縫製の効率化やお客様のご予算の関係で、しだいに箱型というへんてつのないオーニングに落ち着いていったのです。これからは、小売業も生き延びるために専門化して特化していくことでしょう。そのようなときに、オーニングの機能として何が求められるのか・・・・・・。それは、オールマイティなものより、お店のイメージにマッチしたファッションオーニング(装飾オーング)か、または、実用性・機能性を追及した可動式オーニングに分かれるでしょう。
従来の箱型オーニング。比較的単純な形ですが、生地をコットン風味(アクリル)にすることにより、趣があるオーニングになりました。 20年まえの盛岡駅前のデザインオーニングです。当時はこのような曲線のオーニングを競って作っていた時代でした。

これも20年前の盛岡市の平面オーニングです。平面というのはお店をイメージするデザインが難しいのですが、この場合はすぐわかりますね。 15年前の人形町可動式オーニングです。、前タレを少し工夫することによりどんな職種のお店かすぐわかります。写真では少しわかりずらいのですが、切れ目のところに結び目があったと記憶しています。細かいですね。

2)素材に関する無関心
今までは、テントの素材や模様はメーカーから供給されたものしか使えませんでした。柄といえば、ストライプ系のものしかありません。選択肢が非常に少ないのです。以前は花柄のものがあり、一世を風靡したものでしたが、輸入生地を除いていつのまにかなくなってしまいました。その時々の流行の色や柄があるのに、それを提供できないというのであればせっかくのビジネスチャンスを逃していたとしか思えません。でも、これからは違います。インクジェットの発展に伴い思い通りのイメージを布地に転写し、お店の雰囲気をガラリと変えることができます。下の写真を見てください。
最初の写真は七宝柄、もうひとつは豹がらでしょうか。最後のは迷彩色ですね。これなどはテント素材メーカーのサンプルには無いものでした。これが、インクジェットで印刷したものかどうかはわかりません。が、このように実際についているテントをみていると、お客様方は今までのテントの模様に満足していないということでしょう。最近の問屋さんの中には、自社のインクジェットを使い、プライベートの柄を印刷してくれるところも出てきました。また、標準パターンとしていくつかのパターンを準備しておいているみたいです。ようやく”右ならえ”の世界から開放されて独自の文化が花開く素地ができてきたというところでしょうか。

(上の写真は20年前の仙台の喫茶店。フランス製の生地を使っていました。









成城のブティック  丸型のオーニングに七宝模様の柄が印象的です。 ヒョウ柄というのは、流行の周期がありますが、依然として人気の柄です。

迷彩色というのは珍しいというより、今までなかった物ですよね。プラ模型屋さんからこのような迷彩が出来ないか相談を受けたことを思い出しました。 プライベートパターンの例。イラストレーターでパターンを作れば簡単に出来ますので、これ以外にもいろいろ作れますヨ。

3)機械に対する無関心
私たちテント屋ぐらい機械設備に無頓着な業界は無いのではないでしょうか。オーニングの金具まで製作するテント屋さんを除けば、高周波ウエルダーとミシンがあれば商売ができます。そのせいでしょうか、ジャパンショップやサイン&ディスプレィショウに行っても新商品といえば看板業界の方たちを対象にした物が多く、テント屋用として提供されたものなどなにひとつとしてありません。また、「買おうという意欲も無かった」というのが正直なところではないでしょうか。オーニングの文字や絵は看板やさんに書いてもらえばいいという甘えがどこかにあるからでしょう。
それにひきかえ看板屋さんの機械に対する意識の高いことといったら我々の比ではありません。カッティングマシンなどは今や看板屋さんの必需品です。最近では、インクジェットの機械を購入されている方も多くなってきております。「我々のウエルダーと同じ彼らの必需品」といえばそれまでですが、逆にいえば、それを持っていない看板屋さんは、もはや時流に取り残されているともいわれます。悲しいことですが、もはや看板業界も職人としての意識(プライド)よりも効率化が優先されているということでしょう。
ひとさまのことばかり言ってはおれません。我々も、いろんな機械を活用し商品に添加していかなければ時流に取り残されるということでしょう。

4)テント屋の営業形態
よくテント屋は動いてくれないといわれます。メーカーさんがいろんな商品を持ち込んでも積極的にPRしてくれないということでしょう。
それは、我々そのものが、工業用ミシンという特別な機械で、帆布というあまりなじみの無いものを扱う職人であったがため、今までは苦労して営業しなくても生きていけたからにほかなりません。
でも、ここで考えてみてください。
今では、素材メーカーが縫製部門を持ち、我々業界以外の分野、例えば建築資材屋さんの業界に大量に低価格で販売している事実を・・・(防炎シートやPシートがさいたるものですね。)
また、問屋さんにしても、加工部門を持っていて、我々の仕事と同じ仕事をしていることを。または、開発部門と称して、シートハウスやシートシャッターを独自に取付けているという事実を・・・。
また、オーニングの機械メーカーさんが、機械や部品の供給だけでなく、独自の販売部門を持って積極的に自分たちで取付けている事実を・・・

今までは、メーカーは素材の開発、問屋さんはその商品の販売展開、我々はそれを扱わせていただいて利益を得るというように、テント屋が大きくなれば、それとともにメーカーさんや問屋さんも伸びるという三位一体の形をとっていましたが、それはもはや過去の産物と思ったほうがよいでしょう。逆にいえば、メーカーさんや問屋さんにそれだけの余裕がなくなったともいえるし、逆に我々が甘えすぎたといえるでしょう。

それでは、今後我々はどのようにしていけばいいのでしょう。そんなことはだれも教えてはくれません。「自分で考えろ!甘えるんじゃない」 と皆さんは言うでしょう。そうなのです。これからのテント屋は積極的にメーカーや問屋さんにおんぶにだっこでは取り残されるということを・・・。ただ、これだけはいえます。我々の周りにはいろいろな未知の素材があふれております。そのようなものをつなぎ合わせればひとつの大きな商品になります。これからは、われわれテント屋が特許でも取るような本当の意味での製造メーカーとして動かなければならないのではないでしょうか。いまあるものを提供することより、お客様の求めるものが何かを把握し、それに添ったものを提供することが求められる時代になったのではないでしょうか。そのような意味では、これまでの電話当番的な営業形態が崩壊していくことは確かなようです。逆にいえば、普通のあるべき形態に一歩近づいてきたといえるでしょう。